大阪高等裁判所 昭和50年(ラ)215号 決定 1975年8月18日
抗告人 幡本義典
右代理人弁護士 金野俊雄
相手方 幡本ノブ
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一、本件抗告の趣旨及び理由は別紙一及び二記載のとおりである。
二、当裁判所の判断
当裁判所も抗告人の本件起訴命令の申立は理由なきものと認める。その理由は次のとおり付加するほか、原決定理由に記載のとおりであるから、これを引用する。
人事訴訟手続法第一六条所定の子の監護に関する仮処分の本案は、抗告人主張の如く、離婚訴訟又は婚姻取消訴訟それ自体ではなく、右訴訟に付帯してなされる子の監護につき必要な処分として子の引渡を求める旨の申立であると解する見解もあるが、第一に、理論上、子の監護に関する処分は本来非訟事件の裁判であり、離婚訴訟又は婚姻取消訴訟において付帯的に子の監護に関する申立がなされ、これについての裁判が判決主文に掲げられても非訟事件たる性質が失われる訳ではないものであるところ、非訟事件の裁判は形式的に確定しても既判力を有しないものであり、仮処分の本案としての適格を欠くものであるのみならず、第二に沿革的にみても、人事訴訟手続法第一六条の仮処分の規定は、同法第一五条の現行規定の新設(昭和二二年法律第一五三号家事審判法施行法第六条。昭和二三年一月一日より施行)以前から存在したことに徴しても、子の監護に関する申立を仮処分の本案と解することは不当である。人事訴訟手続法第一五条の規定の基本は離婚訴訟又は婚姻取消訴訟にあり、子の監護はその付帯請求であるから、同法第一六条の「子ノ監護」に関する仮処分は、離婚又は婚姻取消の訴を本案とする仮処分であり、被保全権利は離婚請求権又は婚姻取消請求権と解すべきである。
よって、抗告人の本件起訴命令の申立を理由なきものとして却下した原決定は相当であり、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 弓削孟 裁判官 光広龍夫 篠田省二)
<以下省略>